平成16 年 1 月22 日

紋別市長殿
紋別市教育委員長殿
紋別市立博物館長殿


蒸気機関車保存に関する提案書


 現在、紋別市運動公園に保存されている「69644」号蒸気機関車を今後とも完全な形で保存してゆくために、無礼を承知の上、謹んで以下の提案をさせて頂きます。知の上、謹んで以下の提案をさせて頂きます。

1. 「69644」号蒸気機関車保存の目的と意義

 「69644」号蒸気機関車(写真1)は、大正11年に当時の鉄道院(後の鉄道省、日本国有鉄道)が、貨物列車牽引用として製造した機関車であります。製造後より昭和初期にかけて本州各地で使用され、昭和15年に石北本線遠軽機関区に配置変えとなった後は、石北本線、名寄本線、湧網線といった、自然環境の特に厳しいこの道東地区において長年にわたって地域を支える物資輸送の先頭に立ち、生活、産業の維持・発展に極めて大きな功績を残してきました。昭和50年に国鉄の合理化による蒸気機関車廃止により、その52年に及ぶ長く厳しい働きに終止符を打ったあとは、かつて活躍して深いゆかりをもつ、沿線の紋別市内に展示されることとなり、今日に至るまで約27年間大切に保存されてきました。これまでに、その保存に尽力されてきた多くの人々の努力は特筆すべきであります。


写真1 紋別運動公園の「69644」号蒸気機関車

 平成元年に、名寄本線が営業廃止となって鉄道がない街となった紋別市では、再開発によって紋別駅をはじめ旧鉄道関係施設が姿を消しつつあり、過去にこの地方に鉄道が存在して多くの人々の生活とその活動を支えていたことも忘れさられようとしています。この状況において、この蒸気機関車は紋別市に残された唯一の鉄道の形見であります。これからの紋別市を背負うであろう若い人々のために、彼らの祖父母や両親の世代が利用し、恩恵を受けた歴史遺産を残し、また伝えてゆくことがこの地域がこれまで歩んできた道のりを教育する上でのまたとない資料であると思います。さらに、一方現在のような高度に電子化された機器が身の回りに溢れる時代にあって、石炭を燃焼させて蒸気を作りそのエネルギーを使って複雑な機構をを経て車輪を回転させ、連結された客車や貨車を牽いて走行するという、基本的な機械工学の各分野を幅広く取り入れた構造である蒸気機関車は、機械のしくみを知る上で得がたい工業製品であり、その姿に親しむことによって将来、工学方面の技術者を志す人も現れることでしょう。
 以上の点を踏まえ、この蒸気機関車は現在の「完全な姿」のまま将来にわたって保存・維持してゆくべき価値があるものと考えます。

2. 保存のための方策

2−1 移転
2−1−1 移転場所

 現在地での保存が不可能な以上は移転が必要となります。移転先として紋別市内、紋別市外の二通りが想定されますが、1.で述べたように本機関車が永らく紋別市によって管理され、市民に親しまれてきたことから、引き続き市内で保存していくことが望ましいと考えます。ただし、市内であっても諸々の条件を考慮することがなければ、今後の保存を行う上ですぐにさまざまな問題が発生し、本来不要であるべき手間を再び費やすことになります。

写真2 海の付近であったために荒廃した例
(千葉県銚子市内。後に解体・撤去)
写真3 集落から離れた場所に設置されたため、
適切に管理されていない例 (山梨県高根町内)

 写真2に示すように環境条件がよくない場所、また写真3のようにめったに人も訪れないような場所に設置された場合は、管理困難のゆえに老朽化や荒廃が進んだり、また不心得者による悪戯や盗難にさらされることとなって、多額の経費を伴いながらの保存・展示の意義そのものを問われるとともに、管理責任の問題にもつながりかねない恐れがあります。
 よって移転先条件として考慮すべきは、
 @ 市街地内でかつ管理の目が届く場所
    →悪戯による破損や部品盗難等を防ぎやすい。
 A 機関車を見学するために訪問しやすい場所
    →交通の便が車以外に考えられないような市街から遠隔地では、容易に見に行くことができないため、保存目的そのものが疑問になる。
 B できるだけ周囲環境の良好な場所
    →海辺からの距離が近いため潮風にさらされたり、樹木の下であるために枯葉が堆積するような場所では、車体が腐食したり塗装が劣化するなど、荒廃が著しく進行する。
 C 地盤の強固な場所
    →泥濘地や砂地では、時間の経過や流水・雪解けのため機関車の重量を支えられずに地面が沈むおそれがある。
 D 機関車保存のために恒久的な占有ができる場所
    →せっかく移転させても、将来的に区画整理や整地の可能性がある場所では今回と同じ問題が生じる。
 E 将来の維持に利便な場所
    →移転後や将来に整備を行う時、水道や電気などがなければ作業ができない。
 等があります。
 これらを考慮して紋別市内における移転候補地を検討してみましたので、別紙1に示します。以上の条件を満たす場所として、4番「旧名寄本線渚滑駅跡地に残る車庫内」、又は5番「紋別市立博物館敷地内」が望ましいと考えます。

2−1−2 移転方法
移転作業は次の手順になります。
 @車両状態の調査
 A分解
 B移転
 C組立
 まず@では、この蒸気機関車は従前より行われてきた入念な整備によってかなり良好な状態に保たれていると判断します。表面上の、強度的に関係がないために薄鋼板で製作されている部分には腐食による破損があるものの、鉄道車両として強度上重要となる、機関車ボイラ(t13ボイラ用鋼板)、台ワク(t25圧延鋼板)、炭水車台ワク(t16圧延鋼板)、輪軸などは、吊上げ・移動程度の負荷に対しては必要以上の強度を有しているので、表面の多少のサビなどはなんら問題となりません。
 次にAにおいて、蒸気機関車を分解整備する際なども、分解すべき箇所があります。今回は、機関車の上部(ボイラ・運転室)、下部 (台ワク及び輪軸)、そして炭水車の3分割になります。概略は次のとおりです。
 (1) 機関車部分と炭水車の連結棒を外して、分割する。
 (2) 機関車部分の上回りと下回りにわたっている部品類を外す。
 (3) 台ワクとボイラを結合している、缶台(ボイラ前部)・胴受(ボイラ中央部2箇 所)・火室受(ボイラ後部)の4箇所で、ボルトをバーナーなどで撤去する。
 (4) 運転室下部と歩ミ板とを結合するボルトを同様に撤去する。
 Bでは、クレーンにより分解した各部分のトレーラ積載、固縛、移転となります。その他、移転先までの通行可能なルートの選定及び関係省庁への申請等が必要になります。
 作業発注の際は、これらを一括して請け負える業者を選定するのが経費面で有利で、かつ事業に係る手間の煩雑さを少なくする方法と思われます。
2−1−3 移転先の整備
 移転先には予め軌道を敷設します。機関車の全長を考慮して20m程度が必要ですが、機関車重量(約55t)、炭水車重量(約15t)による沈下・傾斜を避けるため、ある程度地盤の固い場所であることが必要です。参考として、鉄道土木専門業者によって列車を運転するための軌道を敷く際の経費は、資材込みで1m当たり5万円程度が目安です。しかし今回は機関車の保存展示が目的であり、軌道の水平とゲージ(=レールの間隔。1067mm)が保たれていれば済むため、市内の土木・建築業者でも施工可能であり、かつコスト抑制の方法となります。軌道敷設については、、別紙2に示します。

2−2 整備・維持

 保存・展示の形態の最終的な構想を、前もって考えておくべきであります。しかし一度にすべてを行うには経費をどう確保するかの問題もあるため、当面必要な作業を行うものとして、段階的に進めてゆくのが望ましいと考えます。作業の優先順として一案を表1に示します。

表1 作業の優先順序案
優先順備  考
現在地からの移転作業
移転先整備 基礎工事、軌道敷設他
機関車の破損部分の補修・整備
仕上げ
周辺環境の整備 説明板、注意板等の設置

整備すべき箇所は、車輌の状態を精査して決定します。現時点で行うべきと考えられる項目について、 別紙3を参照願います。
 整備・維持をおこなっていく上で望ましい形は市民参加形と考えます。案として、
 (1)市民・愛好者参加による定期的な「掃除会」(例.半年一回、年一回など)を、市または博物館の行事として開催する。
 (2)専門知識と技術を有する国鉄OBや愛好者による保存会に、ボランティアとして整備作業への助言や協力依頼を行う。
 (3)1.で述べたような貴重な歴史的・工学的な教育資料として、市内の学校による博物館見学会や機関車写生会といった方法で活用する。
 (4) 整備して電灯類を光らせるとか、汽笛を鳴らせるようにするなどいろいろと工夫をこらしてゆく。また時期を定めて、ライトアップや走行音を交えた展示を行うなどする。
 (5) 機関車を、「どこかの片隅にあるらしい忘れ去られた存在」、「手間のかかる金喰い虫の存在」にせず、あらゆるアイデアを使ってむしろ積極的に活用してゆくことを考える。古くからの歴史を大切にし、これからの新しい発展を推進してゆくという方針を強くアピールし、紋別市が奥行きのある魅力的な街であることを広めるために利用する。

 他にも様々な形が考えられるので、そのアイデアは各所から広く集めるべきであります。いずれにせよ機関車をどこかに置きっぱなしにし、痛んできたらやむなく担当部署が最低限の手当てを行って維持しておくといったやり方でなく、市や市立博物館による積極的なバックアップの下に多くの人が保存活動に参加できるような形をとることが、今後とも機関車の保存継続を行うための最もいい方法です。
 さらに移転だけを1つの事業として完結させるのでなく、常に将来を見越し、後々今回と同じ問題が発生しないように考えておく必要があります。
 市の立地条件から積雪や海風による悪影響は不可避であるため、屋外設置であれば老朽化の進行と手入れの繰り返しとなって維持の問題が常に伴なってしまいます。よって最も望ましいのは機関車を完全な屋内に設置することであります。当初の経費は大きくなりますが今後の不要なコストが省け、かつ恒久的に良好な状態での保存展示が可能です。

写真 4−1 屋内に展示した例@(福岡県直方市。愛好者団体による保存)

写真 4−2 屋内に展示した例A(京都府福知山市)

写真 4−3 屋内に展示した例B(熊本県人吉市)

写真 4−4 屋内に展示した例C(北海道追分町)


しかし、建物の建築には相応の経費が掛かるためこれは将来の課題とし、まず機関車を博物館の収蔵品に指定するとともに、常時シートで覆って環境への曝露時間を極力少なくして腐食・破損・塗装の劣化を防ぎ、かつ期間を限定した公開を行うことが維持管理のコストを抑えつつ良好な状態に保ってゆくための、現時点でとれる最良の方法と考えられます。


写真 4 車輌をシートで保護している例(卯原内駅跡の鉄道公園)


 シートは大きなものが最低3〜4枚程度必要ですが、シート自体の破損による取替えの労力を省くために、耐候性・耐久性のある船舶用などの製品を選定します。機関車に対する1回の丁寧な整備・塗装と公開の前後のメンテナンスによって、10年程度は大掛かりな修繕の必要がなくなるものと考えられます。但し、このように一年のほとんどがシートに覆われた状態では市民と機関車の関係が疎遠となることから、市の祭事や来る「Doいなか博」といったイベントに合わせての公開という方法をとります。

3. 経費
 保存に必要な経費として移動・整備・維持・その他が生じます。市が現在置かれている財政上の諸問題を鑑みて、市の経費負担を可能な限り低減することが、関係各所の理解を得られ、機関車保存実現への鍵となると思われます。しかしながら一人や二人が個人負担する程度では自ずから限界があるため、募金収集によって愛好者、市民など、保存に賛同して頂ける方々からの協力を仰ぎます。

3−1 募金収集の要件
 事業内容が一般に理解されるからこそ募金・協力の提供ができるのであり、担当箇所の検討・決定で事業が進められるだけで一般への情報開示が全くなされない場合や、市側ではタッチせずに個々人の善意によって集めてもらえればいい、といった場合はまったく賛同が得られないのが現実であるものとご認識下さい。
 従って、お願いしたい要件は次のとおりであります。
@ 市では蒸気機関車を将来も原形で保存してゆく方針であり、そのために移動・修理の必要があり、それぞれ経費がいかほどになるかということを明確にすること。
A 市の事業として予算を組んで頂ける部分と、対応困難な部分とがあって、後者については募金形式で広く協力を募る予定であることを明確にすること。
B 問題が発生した際は、できるだけ明らかにして頂くこと。
C  提供された意見は、可能な限り何らかの形で採用されることを明らかにして頂けること。

3−2 部品・資材などの寄贈受付

募金だけがすべての解決手段ではなく、修理・補充が必要な部品をはじめ、軌道設置に必要な資材、将来の手入れの
際に必要な工具・塗料、あるいはシートなどといった物品の寄贈を受付ける方法があります。

3−3 協力先の窓口

以上の受付窓口は、これを市に設置して頂けるようお願いします。理由は以下のとおりです。
@ 市を援助し、かつ盛り上げていこうと考える人々の「協力」であること。
 →保存のために必要なことを市ですべて実施して頂ければ問題はない。しかし、市の財政が厳しい際に機関車保存をお願いする以上、進んで協力の意思を表明されている方々が多い。しかし、寄付をどこに持っていけばよいのかが分からなければ、気持ちがあっても協力のしようがない。
A 信用があるため。
 →個人が窓口となって募集しようとしても信用されにくい。しかし公共機関が窓口であれば市民や愛好者といった人々への協力依頼を行う上で信用上の問題はない。
B 多くの人の目に触れやすいこと。
 →個人レベルでは周知できる範囲がどうしても狭くなる。しかし、公共機関が行っている件であれば人々の耳目に到達しやすく、募金額を少しでも大きくできる可能性がある。 C 意見交換の場にもなること。
 →問題点が明らかであれば、解決のための情報・アイデアも集まりやすい。

 募金というものは、適切な形で行わなければ全く集まらない性質のものであるため、是非ともこれらの点へのご配慮をお願いします。蛇足ですが、以前の事例においても上記の点が明らかであった場合には、愛好者をはじめとする多くの協力が得られ、最終的に素晴らしい結果に落ち着いたことを付記しておきます。
 今回、この機関車へ寄せられる関心と同時に、保存への協力表明も多い状況であります。このことは、市に対して要求するだけに終わらず、保存のために市の負担ができるだけ小さくなるよう可能な範囲で協力したいという考えをお持ちの方が多くおられるということであります。せっかく頂いたこれらの気持ちを無にせずに上手に汲みとる方法を採用することが、経費の圧縮と、市への期待・尊敬・愛着の両立を図ることになります。

<参考>

@(紋別市HP「ガリンコ掲示板」より抜粋)
12/06 Re: 蒸気機関車について
移動費用、修繕・保管費用の支援、施設清掃等の管理ボランティアな ど、紋別市さんと協力していけることはたくさんあります。なるべく募 金口座などの窓口は、問題がなければ紋別市さんの方で早急に立ち上げ 願いたいですが、いかがなものでしょうね。あと募金箱なんかも、市立 博物館やガリンコ号ステーションにおいて、流氷観光の皆さんにご協力 いただく方法もあります。これも、理解がえられ問題なければの話です が。全国へのPRは、私達の重要な協力事項の一つと認識しています。

A(紋別市HP「ガリンコ掲示板」より抜粋)
12/17 Re: いまさらとは思いますが機関車 保存反対
12月16日に、紋別市民さんは書きました。

>もう、保存が決定したようなので遅いといわれるかもしれませんが、

>機関車の保存を紋別市がやるのはばかげていますよ!!

>それに紋別市はもっと他にやる事があるでしょう!!!


 紋別で生活されている方には、私達門外漢には分からない苦労のある事と思います。ただ、対外的にも紋別の存在感を示す事も重要な事だと思います。

まだ、保存が決定したわけではなく、”原型保存する方向がないかどうか、再度検討することといたしました”ですので、紋別市の中でバランスをとった対応がされることを期待しています。

私も保存して欲しいと思って書き込みしましたので、全て税金でなどと無責任な

ことを言うつもりは無く、資金的な協力はしなければと思っています。6000万は無理ですが(笑)保存できるか否かはこれからです。 (後略)

4. その他

 以上、蒸気機関車の保存に際して発生すると思われる諸問題とその解決案について、大変僭越と存じつつも拙い提案をさせて頂きました。諸般の事情があることは重々存じております。しかし今回の事業の成否は、紋別市殿のご対応によって決まるものであるため、関係部署間の調整及び以上に述べた諸案の実施とを心からお願いたします。ご不明の点はご連絡下されば即座に調査し、回答させて頂く所存であります。
  「69644」号蒸気機関車の原形保存事業が、紋別に愛着を持つ人を一人でも増やすとともに、将来の紋別市発展の一助となってゆくことを深く念願しております。このために是非ともご検討とご高配を賜りますよう、衷心よりお願い申し上げます。


写真7 現役時代(昭和50年)の「69644」号蒸気機関車の勇姿(田中祐輔様ご提供)


<別紙1>
表1 移転候補地の案
番号 候 補 地 現在地からの
移動距離
レール
新 設
海浜から
の距離
付近の
状 況
総 合 備 考
1 紋別市運動公園敷地内
(写真5−1)
100m以内? 約400m 市街地 × 移転に伴う費用は比較的少ないが、公園の整備 事業に支障しない適地の確保及び、海に近いこ とから将来の維持管理が問題。
2 旧名寄本線沼ノ上駅跡地
(写真5−2)
約19km 約2.1km 集落外 × 紋別市街地から遠隔であり、かつ付近に集落もない。わざわざ車で見に行く人以外には、ほとんど訪れられることがない恐れあり。将来の維持管理が問題。
3 旧渚滑線上渚滑駅跡の鉄 道記念館敷地内
(写真5−3)
約16km 不要 約10km 市街地

海浜からは標高 300m程度の山を挟むため、環境面では比較的好ましいものの、維持管理は問題。

4 旧名寄本線渚滑駅跡地に残 る車庫内
(写真5−4)
約10km 不明 約1km 市街地 海に近い場所であるが、機関車庫内に展示できれば建物・屋根の設置は不要。車庫所有者との協議が必要。紋別市街地にも比較的近いため、訪問・見学も容易と考えられる。
5 紋別市立博物館敷地内 ex.駐車場内
(写真5−5)
約4km 約700m 市街地 場所の確保は要検討。維持管理には最適。

<移転候補地の写真>

写真5−1 紋別市運動公園敷地内

写真5−2 旧名寄本線沼ノ上駅跡地

写真5−3 旧渚滑線上渚滑駅跡の鉄道記念館敷地内
参考ホームページ
参考ホームページ


写真5−4 旧名寄本線渚滑駅跡地に残る車庫内
参考ホームページ


写真5−5 紋別市立博物館敷地内(駐車場)

<別紙 2>
表2 軌道敷設に必要な資材一覧
番号 項 目 内 容 記 事
1 レール 20m×2本 現在地のものを流用できれば、新規手配は不要
運搬に不便であれば、短いレールを「継目板」で接続
2 継目板+ボルト・ナット
3 枕木 約25本 鉄道会社からの払下を打診
4 犬クギ 枕木1本当たり4本。
計100本+α
5 バラスト(砂利) 所要量 玉砂利程度でも可


図 1 軌道の構造

<別紙3>
表3 機関車の破損箇所及び補修整備の方法

番号 破損箇所 部 分 状 態 補修整備の方法 記 事
1 ボイラ覆い下部 写真6−1 腐食、穴明き 新規製作+溶接取付 腐食部分は切断。図面を元にし、適宜分割した寸法にて薄鋼板(SPCC t1.6)で新製し、溶接取付。
2 シリンダ覆い
(両側面とも)
写真6−2 腐食、穴明き 新規製作+ボルト取付 図面を元に薄鋼板(SPHC t3.2)で新製する。一部部品は現在のものを流用。取付は現物に合わせる。
3 砂箱 写真6−3 腐食、穴明き 穴埋め 穴周囲の腐食部分を広げ、穴と同じ寸法の薄鋼板(SPCC t1.6)を溶接しハンマー、サンダーで整形する。
4 運転室屋根 写真6−4 腐食、穴明き 穴埋め
5 運転室窓ワク

(両側面とも)
写真6−5 劣化、紛失 新規製作+取付 窓ワク(木製)+ガラス。大きめに作り現物合わせで 取り付ける。
6 炭水車前床 写真6−6 腐食、落失 新規製作+溶接取付 図面を元に薄鋼板(SPHC t3.2)で新製する。取付は現物に合わせる。
7 炭水車床(底面) 写真6−7 腐食 サビ落とし グラインダ等でサビを落とす。
8 炭水車側面

(右側面上部)
写真6−8 腐食、穴明き 穴埋め

裏側に薄鋼板を溶接して穴をふさぎ、表側からパテを盛って整形。

9 前照灯ガラス

(炭水車)
写真6−9 割れ 調達+交換 調達して取付。
10 車体全体 写真6−10 塗装劣化 剥離+再塗装 サンダー・紙やすり等で、劣化している現在の塗膜を剥離する。下塗り塗料1回、上塗り塗料(ツヤあり黒色)2回塗装。
11 各部(鉄製部分、塗 装されない箇所) 写真6−11 塗装劣化 剥離+再塗装 サンダー・紙やすり等で、現在の塗膜を剥がして磨き出し、サビ防止のためにクリアー塗料を塗装。
12 各部(銅製、砲金製 部品類) 写真6−12 磨き出し 紙やすりなどで塗膜を剥がし磨き出す。その後クリアー塗料を塗装。
13 運転室内 写真6− 塗装劣化 剥離+再塗装

サンダー・紙やすり等で、劣化している現在の塗膜を剥離。下塗り塗料(屋根裏の木部除く。)1回、上塗り塗料(ツヤあり灰緑色)2回を塗装。

14 運転室機器類、他 写真6− 紛失、固渋 調達、給油 紛失・破損した部品は調達して補充。主要な機器類(ハンドル、焚口)を動かせるよう整備・給油。
<注記>
・機関車が文化遺産であるという認識に立ち、整備に当たっては保存状態を考慮しつつも可能な限り現役当時の姿を忠実に再現することを目標とする。そのために現役当時の状態、さらに現在運行されている蒸気機関車の状態を調査する。
・新規製作する部品は、原図を手配するか新たに製図するなどし、市内の鉄工所に製作・取付を発注する。なお、穴をふさぐ程度の部品は、現物合わせで製作する。
・紛失・破損した部品のうち新規製作すると経費のかかるものは、愛好者などへ所蔵品の提供依頼を行うとともに、鉄道ファン向けの鉄道部品販売店などを通して調達・購入する。
・塗装に必要な塗料

   @下地処理:パテ所要量
   A下塗り用:ジンクリッチプライマー(赤サビ色) 16kg入り×2缶
   B上塗り用:速乾性フタル酸エナメル塗料 (経費上許されれば、耐久性に優れる一液形ポリウレタン系樹脂塗料を使用)
      ※フタル酸エナメルの場合  全体       :ツヤあり黒色   (16kg入り市価約9,000円)×4缶
                         運転室内部  :ツヤあり灰緑色  (4kg入り(市価約3,000円)×2缶
                         表記類等    :ツヤあり白色   (4kg入り(市価約3,000円)×1缶
                         未塗装部分  :クリアー       (4kg入り(市価約3,000円)×2缶


<機関車修理個所の写真>


写真6−1 ボイラ覆い下部


写真6−2 シリンダ覆い (腐食、穴明き)


写真6−3 砂箱 (腐食、穴明き)


写真6−4 運転室屋根 (腐食、穴明き)


写真6−5 運転室窓ワク (劣化、紛失)


写真6−6 炭水車前床 (腐食、落失)


写真6−7 炭水車床(底面) (腐食)


写真6−8 炭水車側面(右側面上部) (腐食、穴明き)


写真6−9 電灯ガラス (割れ)


写真6−10 車体全体 (塗装劣化)


写真6−11 各部(鉄製部分、塗装されていない箇所) (剥離+再塗装)


写真6−12 各部(銅製、砲金製部品類) (磨き出し)


写真6−13 運転室内 (剥離+再塗装)


写真6−14 運転室機器類、他(調達、給油)


写真7 現役時代、雪原を走る69644号機関車 昭和50年