69644修理 2005年4〜5月 

 昨年10月下旬に引き続き、紋別市渚滑駅跡に移転・保存されている69644号機の整備・修理を行いました。昨年は短い時間の中で、複製した運転室窓の取付を主とした作業を行いました。今回はツヤを失った塗装を塗り直し、見栄えの向上と今後の長期間に亘る維持を可能とするべく、全体の再塗装及びその他の破損箇所修復を目標として作業を計画しました。  作業はT.K生(4月29日〜5月7日)、やまてつ (5月2日〜6日)、他にたまたま渚滑を訪れライダーハウスに宿泊していたFさん、T.K生の友人も札幌から駆けつけて手伝ってくれました。例によって事前に紋別市立博物館殿に、工具類や塗料などを送付して預かって頂くと共に、作業に必要な資材をお貸し頂けるようお願いしました。
一日目(4月29日(金))
 前泊した市内Cホテルより市立博物館に伺って、資材関係を保存地まで運びます。今回は自動車までお借りすることができ、大変助かります。  現車は昨年秋以来ですが、冬季のシート掛けで良好な状態に保たれています。早速作業を開始します。運転室屋根からケレン作業を始め、スクレッパーとワイヤーブラシを使って古い塗膜を削っていきます。次いでボイラ上部から砂箱へと進みます。砂箱は古い塗膜が剥がれて凸凹になっているので、丹念に剥がしていきます。また、しっかり喰いついている塗膜もできるだけ表面を荒らして、塗装ののりを良くしていきます。
 炭水車の上面は、錆だらけでひどい状態になっています。ワイヤーブラシなどでは歯が立たないのでグラインダーを使って錆落しをしますが、ものすごいホコリが出るとともに、あっという間にグラインダーのカップワイヤーがだめになってしまいます。
 ある程度進んだ時点で、下塗りを行います。今回使用した塗料は、下塗りがエポキシ系、上塗りが耐候性に優れるシリコン変性アルキッドです。日没の18時過ぎに一日目の作業を終了します。
二日目(4月30日(土))
 今日は朝から雨になってしまいました。気温も3℃程度でときおり雪も混じりますが、なんとか午前中には止みましたので、作業を行います。運転室内の見栄えを良くするため、錆の浮いている箇所を削り、蒸気分配箱に銀色、インゼクターやATS関係のボックスに灰緑3号を塗装します。併せてインゼクターハンドルが紛失していたので、用意してきた複製品を取付けます。そのほか、固渋しているハンドル類にCRC−556とグリスを差し、加減弁ハンドルも30年ぶりに動くようになりました。
 雨が上がったので下回りに掛かります。動輪や台枠の塗装は完全に浮き上がってしまっておりどんどん剥がれていくので大変ですが、頑張ってケレンをしていきます。
 前端梁も塗装が荒れているので、ケレンを行います。塗膜をめくるとかつての警戒色である黄色が現れます。ケレンのついでに、錠が落ちない自動連結器を修復します。ナックルの一部をグラインダーで削り、油を差すことで動作が復活しました。
炭水車側面は塗膜が所々浮き上がっていると共に、日照りの後の地面のように荒れていて平滑でないことから、上塗りしてもきれいな仕上りにならないため、できるだけ塗膜を剥がしてしまう必要があります。しかしスクレッパーを使っていては効率が悪いので、グラインダーに#80の砥石をつけてどんどん削っていきます。同様に、凸凹が目立つデフレクタもできるだけ滑らかにしていきます。
四日目(5月2日(月))
 今日は事前の天気予報が外れ、朝からいいお天気で気温も上がります。引続き手をつけていない部分のケレンと下塗りを行っていきます。T.K生の友人も来訪し、作業がはかどります。今日はやまてつも合流して頂ける予定です。  夕方までにはだいぶ下塗りの部分が広がりましたが、まだまだ手付かずの所も多い状態です。改めて機関車の巨大さを痛感してしまいます。あと4日。大丈夫かな?  今日は久しぶりに宿に泊まります。紋別には素泊まりで3500円位の宿があるので助かります。
五日目(5月3日(火))
 今日も最高気温が約10℃と寒いのですが、いい天気です。やまてつが合流してからは、作業の進捗度合いがぐんと進みます。錆を落として磨いては下地塗装を進めてゆき、夕刻にはほぼ真っ赤かにすることができました。  今晩は市立博物館の皆様にお招き頂き、おいしいカニ料理をよばれました。紋別はとにかく海鮮が美味しいところ、さまざまな料理を十分味わいました。こうして、整備作業に対して多大なるご理解とご協力を頂けるのは、本当に有難いことです。
六日目(5月4日(水))
 午前中はなんとか天気が持ちましたので、ケレンと下塗りを進めていきます。炭水車の後部も、昔に塗られたパテが荒れてしまって凹凸が激しいのでひたすらグラインダーで削ってできるだけ滑らかにしていきます。
 しかしながら午後からはついに雨が降り出してしまって、できるところから上塗りをしようと予定したものの塗装作業は中断、やむなく運転室内の整備などを行います。壊れていた機関士側及び助士側の座席と肘掛は、やまてつがクッションとウエスを詰め物にして、上手に作ってくれます。これで運転室内もかなりいい状態にまで整備できました。
夕方になって雨はやみました。
 塗り残したキャブ海側の下塗りを行います。
 5時過ぎになって日が出てきました。真っ赤な機関車が浮かび上がります。
 夕暮れ時の低い光線に鈍く輝く69644、明日は良い天気であって欲しい。
七日目(5月5日(木))
 残すところあと二日。今日が勝負です。どんよりと雲が低くて風も強いのですが、上塗りを開始します。電動塗装機とローラー、ハケを駆使して、とにかく上塗りのツヤ有黒色を塗っていきます。風が吹くと電動塗装機のペンキが舞ってしまい、やまてつは真っ黒になってしまいました。運転室屋根からボイラ上部、そしてボイラのサイドへととにかく塗っていきます。作業が完了できないという訳にはいかないのがプレッシャーになりますが、昼頃までにはなんとか大部分を塗装できました。しかしまたしても雨が降り出しました。海側(=助士側)からの横なぐりなので、なんとか風下側だけでも仕上げていきます。
 夕刻には少し小止みになったので、ウエスで雨しずくを拭きつつデフレクタと炭水車側面を残して塗装を終了させました。
デフレクタには、一昨年の秋より紋別市ホームページ「ガリンコ掲示板」にて一生懸命69644号機の保存に尽力された方々のお名前を、記念と感謝の気持ちを込めて書き、また炭水車側面にはメッセージを書いてみました。

八日目(5月6日(金))
 やまてつも予定を変更し、今日も作業をして頂きます。朝からの濃い霧と0℃近い悪条件で塗装が困難なのですが、湿った車体を懸命にウエスで拭いていると昼前には少し雲が高くなって乾いてきたので、残った部分の上塗りをしていきます。しかしながら、ランボードの上や炭水車上面など、水溜りになってしまったところは結局塗装できずじまいになりました。この時期のオホーツク地方は天候が不順で、気温も常に5℃以下なので塗装には不向きなのが困ります。それでも夕方までには、塗り残しがたくさんあるものの一応なんとか見ることのできる状態にまでなりました。
 本日は市教育長と博物館の皆様から、夕食を共にしながら労をねぎらって頂きました。やまてつは今日には帰途につくので、闇の中後片付けをして紋別を出発します。

 出発前に機関車を自動車のライトで照らして撮影会。ヘッドライトには電球を入れてみました。





九日目(5月7日(土))
 今日が作業の最終日です。T.K生も昼過ぎの飛行機で出発するので、朝から片付けをしていきます。散らかした工具や資材を整理し、現車の周辺と運転室などを掃除します。残念ながらやり残した部分はたくさんあるので、また次の機会を見て仕上げたいと考えています。撤収前の時間を利用して、前照灯とその台座の間のボルトにワッシャをかませて前照灯の傾きを修正し、見栄えを良くしました(写真15)。

・完成
 翌朝早く、完成した姿をカメラに収め現場を去りました。