69644修理 2004年10月 

 渚滑駅跡に移転し、恒久的に保存の決まった69644、部分的に手は入れられているのですが、まだまだ修理をしなければならない個所はたくさんあります。2004年8月のT.K生さんが訪問し簡単な修理と機関車の各部の状況を調べました。それを基に修理個所をピックアップし、この10月に修理を行いました。各部の部品寸法の計測が必要となりましたが、9月に紋別を訪問された乙松さんにお手伝いしてもらいました。  この修理は当初は15日〜17日を考えていたのですが、やまてつの都合の関係より、T.K生さんが10月15〜17日、やまてつが16〜18日の作業を行いました。塗装のタッチアップ、汽笛、安全弁、ナンバープレートの磨き出し、新製した窓の取り付け、煙突の穴開き個所のパテ埋め、テンダー側ヘッドライトガラスの取り付けを行いました。その時のエピソードなどを交えてレーポートいたします。

・1日目の作業(10月15日)
 旧名寄本線渚滑駅跡に移転された69644の整備作業を行ってきました。事前に、管理箇所の紋別市立博物館殿へ、作業を行うことへの許可、発電機と脚立(高所作業用)を初めとする市所有の資材貸与のお願い、そして必要機材の送付と受取・保管などをお願いしました。  今回は、現地で取れる時間が実質4日弱であり、欲張っても全体のケレン+塗装まで不可能であったため、運転室窓関係の取り付けを重点に、雨水浸入防止用煙突フタや圧力計などの運転室機器類の取り付け、腐食の甚だしい炭水車他の塗装を目標として、作業内容を計画しました。運転室の窓類や塗料、資材関係を、それぞれに博物館宛てに送付し、作業日まで保管して頂きました。
 15日の13時過ぎに紋別到着。レンタカーで博物館を訪れ、預かって頂いていた資材を受取りに行きました。一台ではとても積みきれないので博物館のご協力を得て、渚滑駅跡に運ぶことができました。
 69644の状態ですが、離れた所から見る限り、これまでの定期的な塗装のためもあって全国の保存車両の中でも悪くない部類に入るのですが、いかんせん30年近い野外での展示のため、手の入れ難い下部や運転室など塗膜の劣化や腐食が見られます。
 14時30分に現地に到着し、早速作業を始めました。まず運転室の窓を交換するため、現状の窓と下部レールの撤去から掛ります。助士側は、レール(木部)がかなり腐食していたため簡単に取り除くことができ、レールを運転室外板にとめているボルトも全てグラインダーで落としてしまいました。取り外した後の窓周囲は腐食が進んでいるので、ワイヤーブラシで錆落としをし下地塗装を行います。しかしながら、機関士側は枠が壊れているにも関わらずなかなか窓を外せないため、バールを使って力任せになんとか撤去しましたが、下部レールは取付ボルトが共回りしてレンチでは外せず、一旦あきらめました。
 その間に資材の荷解きをし、煙突フタの塗装を行っておきます。秋の早い日没で、すでに周囲は暗くなりつつあり、なんとか初日に窓関係の撤去を行いたかったのですが、後妻の落とし窓もなかなか取り外せません。
暗くなってもできる所から、と思い、運転室内の破損機器類の取り外しに掛ります。水面計は、破損しているガラス管を外して、用意してきたΦ15mmのアクリルパイプを取付ける予定です。水面計カバーをスパナで取り外し、色褪せて劣化したボイラ覆いの塗装をできるだけ剥がした後に下地塗装をしました。
次に、ランボードを現役時代の黒色に復元するため、ワイヤーブラシとスクレッパーを用いて現状の塗膜や錆、コケなどを剥がしていきます。すでに外は真っ暗で、発電機から引いた蛍光管で照らしながらの作業となってしまいなかなか能率が上がりませんが、なんとか両側の下地塗装まで完了しました。次いで、色褪せてしまったナンバープレートの赤塗装を元に戻すため、ディスクグラインダーで古い塗膜を剥がしておきます。時間は21時過ぎ、初日はここまでにして宿に向かいました。

・2日目の作業(10月16日)
 16日(2日目)、朝8時より作業を始めます。
前日にできなかったナンバープレートの古い塗膜を剥がしつつ同時にランボードの黒塗装など、塗装作業を行います。
塗装が乾く時間を利用して、ボイラ上の汽笛と安全弁をグラインダーを使って磨きます。保存場所の周囲はパークゴルフ場であるため、朝から地元の方々が次々に集まってくるのですが、グラインダーの騒音に皆さんが閉口されているのが恐縮でした。それでも苦情を言われることのないのは幸いです。
さらに、紋別市教育長から差し入れも頂いてしまって大変恐縮しました。
中にはお餅、お菓子、飲み物等が入っていました。夜の作業は寒くてお腹もすきました。お餅はお腹にたまるので、夜の作業には助かりました。この場を借りてお礼申し上げます。
 お昼にやまてつさんが到着し、作業を再開しました。2人あわせると、前日に外せなかった機関士側の窓下部レール撤去など、作業がどんどん進んでいきます。
やまてつは作業2日目、旭川空港に入り、レンタカーを借りて紋別入りしました。機関車に到着したのは、およそ14時頃となってしまいました。
地域では「いなかDO博」が開かれています。機関車にも旗が取り付けられていました。
今回のメインの作業は新製した窓の取り付けです。T.K生さんにまず始めに窓と窓レールの撤去をしていただきました。この他に、銀色だったランボードの白線を黒にタッチアップ、ナンバープレート、汽笛、安全弁の磨き出しをしていただきました。磨きだしは、なかなか大変で、途中までしか仕上がらなかったそうです。
テンダー後ろ側ヘッドライトのレンズは割れています。取り付けられた網の中で破片が残っていました。
煙突は、鋳造品である化粧煙突上部に腐食による大きな穴があり、早く手入れをしないと雨水によってさらにボロボロになる恐れがありました。この部分はパテによって埋めておくのが修復方法ですが、邪魔になる回転式火粉止めを一旦取り外しました。
回転火の粉止めを取外した後、穴に溜まったホコリをブロワ-で吹き飛ばしました。煤が出てきて、現役時代から空いていたことが解ります。末期に化粧煙突を無くした9600も多かったのですが、機関区では手を焼いたのでは。
ホコリを取り除いた後は、パテ埋めする個所を磨き、サフェーサーを塗りました。煙突について、この日の作業はここまでです。
 事前に用意した窓下部レールの位置決めをするため、運転室外板のボルト穴を基準にケガキと穴明けを行います。窓縦枠との干渉部分をグラインダーで削って位置合わせをし、ドリルでボルト穴を明けます。まず助士側から取り付けを行います。穴明けをした下部レールを仮止めし、窓を入れるのですが、縦寸法が少し足らず、調整が必要です。
夕日を浴びる69644、この時、北海道民有新聞の記者さんが訪れ、取材を受けました。完成にはまだ遠い状態です。
 この日の夜、紋別市立博物館の皆様方により地元料理を食べさせていただきました。新鮮でおいしい魚介類を味わいながら69644移転の苦労話を伺いました。ガリンコ掲示板に最初に返事を出すまでに、市長まで決済を受けなければならず時間がかかったこと、移転先を見つけるまでいろいろな地区行ったり来たりし交渉にあたったこと、輸送方法、発注の段取りなど、非常に大変であったことを伺いました。しかし、輸送の当日、朝もやの中を移動する69644は思ったよりも早く、何事もなく目的地に到着し安堵したということでした。  69644は今後も残ることになり、その維持管理にはボランティアの協力は得たい、これからは良い形での関係をきづいていきたい。また、頂いた寄付は、紋別市長より発案があり、単年度会計で使い切るのではなく、屋根を作ったり、大きな修理をする時に使えるように残しておいて頂けることになりました。(この文全体後で再構成します。)
紋別は港町、ここで採れる魚は身が引き締り、大変おいしかった。
おいしい鮭の頭です。じっくり煮込んであり美味でした。
ニシンの焼き魚です。これも美味でした。


・3日目(17日)の作業
 8時から作業を始めます。助士側の窓取り付けを完成させるとともに、機関士側の窓を取り付けるべく、運転室外板のケレンと塗装を行っていきます。この日は、機関車の前で地元農家による「野菜市」が開かれるので、朝からたくさんの人が訪れて賑わってきます。
3日目(17日)朝です。機関車の整備をしていると野菜を積んだトラックが何台か止まり、そのうち、各方面から車がやってきて、朝市が始まりました。
市場の賑わいと機関車の上で忙しく作業するT.K生さん
機関車の置く位置は、道に近いところにするか、離れたところにするかで意見が分かれたそうです。最終的には離れたところに決まったのですが、こうして人が集まる広場ができることで、機関車も以前と比べて注目を浴びるようになったそうです。この広場は「SL広場」と名付けられたそうです。
 私のほうは、仕事の都合で昼過ぎの紋別空港発の飛行機で出発しなければならないため、とにかくできるところを仕上げるべく、塗装の劣化していた助士側の前妻開戸の塗装を行い、さらにやまてつさんと機関士側の窓の仮付けをしてから作業を終了し、飛行機に乗りました。



T.K生さんは、この日の昼の飛行機で帰らねばならず。窓の取り付けなど、大変な作業は先んじて片付けました。
昼わずかに回ったところです。なんとか窓の取付を終了しました。
区名札入れには、写真を撮る為に遠軽の区名札を差し込みました。
T.K生さんが帰る飛行機です。
T.K生さんが帰ったあとは、一人もくもく作業を続けました。まずは煙突の修理です。昨日に行った下地処理に続き、アルミメッシュとパテを用いて穴を塞ぎます。
パテが固まるまでの時間を利用して、ナンバープレート4面の磨きだしをしました。
とだんの湯、
T.K生さんお勧めの回転すし
サーモンは確かに絶品だった。


・4日目(18日)
 この日が作業最終日です。この日は夜遅くまで作業しました。博物館の方で、夜遅くまで作業もあるということを地元の方々、警察等にもアナンスしていただいたので特にトラブルはありませんでした。このような作業に辺り、関係機関に協力していただけるか頂けないかは重要なことです。
まずは煙突を仕上げます。削っては盛り、削っては盛り、形を整えて行きます。
煙突については、パテが乾いた後に最終的な整形作業を行います。
パテが固まるまでの間に汽笛、安全弁を磨きだしました。グラインダーにたわしのようなものを取り付けて磨きます。
一昨日にT.K生さんが磨きかけてくれているので、少しは綺麗です。
まずKURE556を万遍なく吹き付けます。
サンダー#240を利用して磨きだしました。30分ほどでここまで輝きます。
塗装の必要があるため、まずは煙突をさび止めで塗装します。
塗装が乾くまでの間、取外した回転火の粉止めに蓋を取り付けます。まずはシリコーンを取り付ける所に塗りつけます。
蓋をかぶせます。
出来上がり
煙突の黒塗装です。煙突の塗装する過程で、今回の69644の件で協力して頂いた方々の名前をつづりました。最後には黒で塗り尽くされてしまったのですが
夕日にあたって美しい69644
いろいろな角度からです。右側面からの撮影です。夕日があたってぎんぎんに輝いています。この時、ヘッドライトのカバーを一時的に取外しました(塗装のため)。
頂いた現役時代の写真を再現する角度で撮影してみました。
T.K生さんの先輩にあたる人が撮られた69644現役時代の写真。ほとんど形状が変わっておりません。
左側面
テンダーヘッドライトガラスの破損状況と、新たに取り付けるライトレンズ
ライトレンズ取り付け終了後の状況
やっと、後ろ側も体裁が整いました。
中にはおそらく保存当時からと思われるような、スス、錆びた鉄粉が溜まっています。時間が無くて除去できませんでしたが、次回には除去したいと思います。
運転席後ろ側の小窓です。たての寸法は正しかったのですが、横が足りませんでした。あて木をし補います。
作業終わり近くになります。運転室内に溜まったゴミを取り除きます。リンゴちゃんが置いていってくれたと思われるホウキとチリトリがありました。利用させていただきました。運転室前方にはまだ、たくさんのゴミが残っており、手が届かないことより、次回にでも、真空掃除機を利用して吸い込めればと思っています。
出来上がった運転室内の状況
取り付けた側面窓と後ろ側の小窓

・完成
 翌朝早く、完成した姿をカメラに収め現場を去りました。
煙突に回転火の粉止め、ヘッドライトの保護用の網をかぶせました。


後ろ側です。ヘッドライトのレンズが付き、落ち着きました。
69644のスノープロ-は元58629のものであることが解ります。58629は羽幌炭鉱鉄道に移り、現在、羽幌町で保存されています。